【第5話】これからのタクシーのスタンダードになるかもしれない!?「AIタクシー®」とは何か

2020年02月12日

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タクシーにまつわる「知らなかった!」がわかるTAXI(タクシー)+DICTIONARY(辞書)。題して「TAXINARY-タクシーナリー」。第5話は「AIタクシー®」。AIといえば、これからのIT産業を牽引するであろう重要ワード。インタビュアーの筆者が調べたAIの定義は「人工知能 じんこうちのう(artificial intelligence)」そう、略してAIとなるが、果たしてその人工知能によるタクシーとはどんなものなのか? 長きにわたり研究・実用化にあたった株式会社NTTドコモ社の開発担当、および共同でこの開発にデータ提供とともに事業推進された東京無線協同組合の高林副理事長に話を聞いた。

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(右)株式会社NTTドコモ IoTビジネス部コネクテッドカ―ビジネス推進室 
先進ビジネス推進 先進ビジネス推進担当課長 槇島章人氏
(左)株式会社NTTドコモ IoTビジネス部コネクテッドカ―ビジネス推進室 
先進ビジネス推進 先進ビジネス推進担当 鈴木和成氏

 

―(太字 T’S LIFE編集部)まず前提としましてAIタクシーと呼ばせていただきますが、これはどのようなことであり、いつ頃からその開発がスタートして導入に至ったのかという経緯をお伺いしてもよろしいですか。

時期で言いますと、我々は移動の効率化と言いますか、いろいろな場面で、移動に関する社会課題がいわれてきていた時期のことです。都市部でいうと渋滞がありますし、郊外に行くと足をいかに確保するかというところが課題としてありますね。そういうことを考えたときに、やはり効率的な〝生産性の高い交通″が必要であろうというところが、我々の中で考えていたことです。2015年の12月くらいからそういうことを考えておりました。 これは乗りたい人と乗せる側の需要と供給をいかにマッチングさせるかというところがキーになります。これはもちろんのことだと思うのですが、そのためには、〝未来の需要″というところがわかれば、それに合わせて移動手段を供給できるであろうというところから、まずは未来を何か予測ができないか、というところに着眼点を置いて取り組みを開始しました。

 

―なぜそれをNTTドコモ社が取り組みはじめたか、そのあたりをお聞きしてもよろしいですか。

その答えは、「ドコモは携帯電話の通信会社である」というところがあるかと思うのですが、我々はおおよそ7,800万回線のお客さまにご利用いただくネットワークがございまして、今からおよそ8年前に、「モバイル空間統計」というビジネスを開始しております。これが何なのかと言いますと、ドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを使って、個人情報やプライバシーをしっかりと保護した形で、過去1か月前までの人の動きを性別や年齢層などの属性別に統計化し、データ提供するサービスです。

このデータは街づくりや、出店計画などにもご活用いただいており、ドコモの関連会社であります、株式会社ドコモ・インサイトマーケティングが、営業販売をしております。我々の通信ネットワークには膨大なデータ、レベル感でいうと、テラの1,000倍のペタバイトという単位のデータが流れており、かなりのマシンリソースを使ってこのデータを処理して作成しています。 この度、この統計データ作成を高速化する技術を開発し、約30分以内で出力できることに成功しました。この人の動きがリアルタイムにわかる統計データをうまく使えば、今まで気づいていないような移動需要を予測できるのではなかろうか。この高速に人の動きを統計化できる技術を持っているところが「なぜドコモが」というところの答えとなります。

我々の扱っている「携帯電話」の通信は、別の言い方をしますと「移動体通信」という言い方をします。我々にとって移動というものは前々から親和性があるビジネスです。我々のこの技術アセットと東京無線様のタクシー運行データを組み合わせ、更に、天気情報や周辺施設情報などを追加でうまく掛け合わせることによって、精度高くリアルタイムにタクシー需要を予測できるのではないかと東京無線様と議論し、実証実験の開始を発表させていただいたのが2016年の5月末です。 発表をさせていただいてから、ドコモではAIのタクシー需要予測モデルの開発を加速し、並行してタクシードライバーに予測結果をお見せするためのタクシー車両に搭載するアプリの開発を開始しました。

そして、2016年の12月から2017年の3月の4カ月間に東京無線様と実証実験を進めさせていただき、結果として、全期間4カ月連続で売上向上を確認することができました。全期間でこの結果となりましたこともあり、実用化に向けた開発を進めまして、2018年の2月から商用サービスを開始したという形になります。

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―これはそもそも当時ビッグデータの活用と言われた頃に始まったのでしょうか。

〝ビッグデータ″という言葉から、だんだん「AI」という言葉にシフトをしてきていた時期だったと思います。我々にはR&D部隊もありますし、また、私共IoTビジネス部という部署名であり、IoT (Internet of Things)に関してのビジネス部門ではありますが、新たなビジネス開発だけでなく、先進的な技術開発を進めるだけの技術力ももっておりましたので、東京無線様のご意見をお伺いしながら、AIタクシーの開発を進めさせていただきました。

 

―実証実験のときに、予測をどこまでするか、ということが難しかったのではないかと想像しますが「予測」についてはどのような議論があったのですか?

まずどういった形で予測すべきなのかというところで、我々は、実証実験のときもそうなのですけれども、500メーターメッシュ単位で、現在から30分後までの未来のタクシー乗車台数を予測します。なおかつ、その中での500メーターメッシュを5×5の25に分けて、その中で、かつ獲得確率の高いところを示します。併せて、道路の「上り」「下り」方向どちらか偏りがあると予測できた場合においては、その情報も併せて提示しています。

実証を行うにあたり、前段の予測のモデルをつくっていく中、東京無線様とディスカッションをさせていただきながら、どういった形で予測するかを確定していきました。予測する時間帯については、技術的には1時間先でも2時間先でも予測をすることは可能ですが、あえて現在から30分後までにしました。これは、東京無線様とのディスカッションの中で、あまりに先の時間の予測結果を出すと車が集中する可能性があるとのご意見をいただきました。結果として「30分後まで」というところの部分で見れば、車が一極集中することはなくなるだろうということで、この時間を予測する時間帯としています。

 

―なるほど、今のお話の中で「上り」「下り」の判断は難しかったのではないのでしょうか?

実証において株式会社デンソーテン様の配車システムのデータを使わせていただいています。配車システムはGPSデータを使っており、車両の動き、軌跡を追って見ることができます。実際の車の軌跡をもとに判断をしているため、若干GPSで検知した位置データがずれたとしても「上り」「下り」は判断できます。実証実験を通して、東京23区と武蔵野・三鷹地域全体の予測を、ドライバーの方に見ていただき、確認を進めました。

―デンソーテン社との連携によって、ドライバーがわかりやすいインターフェースが実現したのですね。

そうですね。我々NTTドコモはタクシー等の移動需要を予測するところにノウハウ・強みはありますが、それ以外はノウハウがございませんでした。そこを配車システムの開発でドライバー様への情報の見せ方についてノウハウをお持ちのデンソーテン様が我々の需要予測データを活用して最終的にアプリケーションを開発されました。実証実験上は、まず需要のデータを見ていただいてどう効果があるかという観点でやっておりましたので、我々独自のインターフェースを使っていました。

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 (左)デンソーテン社のアプリケーション
(右)NTTドコモが開発した実証実験時に使ったアプリケーション

 

―少し細かい機能の話になりますが、例えば電車遅延があった場合というのは、情報に反映されるのでしょうか?

はい、電車遅延による人の滞留は予測にも反映されます。我々がこの予測モデルを開発するときに、イベント情報も使えるのではなかろうかと思っていました。ただ、できるだけ需要予測に必要なデータは費用の観点で絞ったほうがいいだろうということも考えておりました。我々のリアルタイムに人の動きがわかる統計データは、なぜそこに人がいるのかはわからなかったとしても、単にそこに人が何人います、ではなく、性別と年齢層別で何人いるとか、普段よりも増えているとかを把握できるデータです。なぜそこに人が集まっているのか。もしかしたら、何かしら面白いイベントがあるのかもしれませんし、何かしら電車がストップして滞留しているのかもしれません。理由まではわからないのですが、その集まっている人の特徴として、性別、年齢層や、そのエリア外からいらっしゃった方なのかの情報が含まれており、その中にタクシー乗車に影響を及ぼすファクターがあるとAIが判断すれば、その情報だけで適切な予測ができます。実はイベント情報も使ってやってみたのですが、我々が保有する人の動きの統計データだけで予測は十分にできました。それにイベントデータは予め分かっていない電車遅延などの突発的な人の集まりまでは把握できません。新たな費用を負担してイベント情報を入手することにあまり意味がないと判断し、イベント情報は使わないことにしました。

 

― 例えば今日、朝の天候が悪かった。まさにそういったときに急に通勤ラッシュ時に電車が止まったとします。いきなり数字が跳ね上がるということになりますよね?

そうですね。そこで人が滞留すると、おそらくタクシー需要へも影響を与えることになると思います。ただ、必ずしも人が集まったからといって確実にそれに比例してタクシー需要が増えるとは限りません。我々はリアルタイムで人の動きを押さえているということと、その人の集まり方によって、タクシー需要がどう変化するかを学習し予測モデルを作っています。それを組み合わせることによって、そういうときに発生するタクシー需要を予測することができるのです。

いろいろな方にこの予測をご説明させていただく機会がありますが、「予測は魔法ではない」という言い方をさせていただいています。つまり、これは東京無線様のタクシードライバー全員の方の経験の集積であると我々は考えております。この東京23区、武蔵野三鷹のエリアにおいての全ドライバーの方の乗降の履歴データに対して、そ人の動きや、天気データ、施設データなどから特徴をAIが見出す、学習しているわけで、これは、過去のドライバーの方々の経験に基づく予測になっています。 我々は全国でAIタクシーサービスを提供しておりますが、東京無線様に提供をさせていただくときには東京無線のデータのみでやっております。

というのは、東京無線様の予測モデルを別の会社様で使うとなると、それはノウハウを別のところで流用をすることになってしまいます。東京無線様と別の会社様が連携をされるということであれば話は別ですが、その会社のみの情報・経験を予測結果という形でご提供しているということになります。

 

―このデータが実際にどう活用されているか、という点についてはいかがでしょうか?

そうですね。たとえばベテランドライバーにおかれまして、こんなのはなくても行けるよとおっしゃられる方はいらっしゃいます。そのドライバーの方も、過去の自分の経験から、大体こういうふうな天気のときにはここに人がいるだろうとか、例えば人がこれだけ歩いていたらその先に乗る人がいるだろうとか、そういうふうな経験はかなりお持ちだと思います。そういうところの蓄積した結果でもあるのですが、我々は、ドライバーの目の前の情報だけでなく、運行エリア内すべての情報を一括で捉えています。一人の人ではセンシングする範囲が限られてしまう中で、面的に押さえているところが、AIタクシーの価値の一つではないかと考えています。つまり、一人のドライバーの方に閉じてしまっている経験を全体に広げながら、一人の人ではなかなか把握できない情報をもとに、このAIタクシーというツールを使って需要を予測できるようにしているというところがポイントとなります。

 

―ベテランドライバーの感覚を新人もある程度共有ができるということにもなりますね。

おっしゃるとおりです。ベテランドライバーの方も、新人の方々にレクチャーをするのは難しかったりされるのではないでしょうか。また、ドライバーの皆様は、売上を上げる競争というのがありますから、なかなかそういう情報は共有されにくいものであるというお声をいただいています。そういう意味では非常に有益なのではないかなという声はいただきました。ただ、過去のタクシーの運行データだけで予測すると、おそらく、ベテランドライバーの方と新人の方々でお客様を取り合う可能性はあり得ます。我々のAIタクシーは、人の動きを活用していることで、ドライバーの方が気づきずらい潜在需要までも予測ができることで、全体のお客様獲得の底上げに貢献できると考えています。

 

―他に何か特別な機能はございますか?

予測の結果で、先ほど数字を出しています。その中で確率の高いところを示しています。また方向も含めて出していますというところもありますが、我々は人が普段と異なり急に増えたところのマークを出すようにしています。

 

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先ほども申し上げましたように、この予測モデルは、全ドライバーの方々の経験に基づいてつくられているものです。例えば、需要予測値が高くない結果となっていても、人が集まっていて日常的ではない動きになっている点を示したときに、行ってみたら、お客様を見つけられるとします。そうすると、それがまた新たな経験として予測モデルに反映をすることができ、予測の精度を更に高めていくことができるのです。我々は元々のドライバーの経験を形にした予測だけではカバーしきれない需要も拾いたいと考えています。この情報があらたな顧客獲得につながればと考えています。

 

―それは単純に、ドライバーの経験値ではない、いわゆる新たな学習能力みたいなもの、ということですね?

はい。経験に基づいた予測をするというところは同じです。経験だけでは行かなかったであろうところを新たな経験として追加する。それによって学習時に新たな経験が追加され、予測できる能力を高めていくことができます。人が集まると100%それが需要につながるかは分かりませんが、人がいないところに行くよりは、獲得確率は高いと考えています。そういった新たな経験の蓄積によって、より売上向上やお客さんの待ち時間短縮につながる予測につなげたい。そういった学習を進めるための機能を入れています。

 

なるほどありがとうございます。続いて、この実証実験のデータを提供され、共に事業推進された東京無線協同組合の高林さん、今は事業者としてはどのような状況にありますでしょうか。

―(東京無線・高林)そうですね。まず、このシステムを導入するにあたっても、課題はたくさんあります。自分のテリトリーを外れると状況がよくわからないのです。例えば東京下町であれば武蔵野に行ってもわからないし、武蔵野の人が下町に行ったら全然わからないという状況が生まれる。そのときに今の乗務員が取る行動というのは、自分の一番好きなところに戻ります。しかし、このAI予測がちゃんとしていれば、自分の知らない土地に行ったときに、その場所でもう1回営業をしてどこかに行く、ということが可能になり、新人ドライバーだけではなく、あらゆるドライバーに有効です。ただ、その活用方法がなかなか理解できない、つまり、勉強をしたうえでツールを使う必要がある。私の立場であれば、このシステムの必要性を伝える活動をして、これからさらに推進してくことが重要だと思っていますね。

 

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東京無線協同組合 副理事長 高林良吉氏

 

―ドライバーの反応はいかがでしたか?

―(東京無線・高林)そうですね。最近になって少しずつ今AIがだんだん浸透してきて、実車率の向上を考えだすと、実は有用なのではないかと思う乗務員が少しずつ増えていると思うんです。だから、知らないだけで、みんなそれを使いこなそうとする。管理側も体制強化しなければなりませんし、または時間が解決するのではないかと思っています。

 

―まさに今、啓蒙活動が必要と。社内でレクチャーを実施されているのですか?

―(東京無線・高林)はい。まさに今、ちょうどNTTドコモ様と共に、どのように教育したらいいかという話をしています。東京無線内でいいますと、新人の教育にはもう取り入れております。タクシー乗務員になる前の研修の中に、カリキュラムとして入れています。それもあって、スタート地点からこの技術があっての新人ドライバーにとっては教育として早い面はありますね。 また、タクシーも時流にあわせて行かなければならないと考えています。2020年、つまり東京オリンピックイヤー、そしてその後の景気に左右されない実車率の向上、また、私が考えているのは、働き方改革です。営業時間が短くなっていったときに、同じ売上を上げようと思うと当然、実車率を上げなければならない。そんな折に、当然2020年以降には、観光客などの減少も考えられますから、実車率が下がっていくと思うのですね。そこのためには重要なツールではないかなと思っています。

 

―そうですね。これからの社会変化に対し有効なツールですね。高林さんが思う、機能面でのさらなるNTTドコモ社への要望はありますでしょうか?

―(東京無線・高林)そうですね。主にドライバー自体がどう活用できるか、となりますからドライバーに対しアンケートを取るなどして、さらにフィードバックしたいと考えています。現在でいいますと、本当に500メーターメッシュが良いのかどうか。もう少し細かい道、ポイントであるべきなのか、と、これは仮説ですが。あとは需給ですよね。需給が正確にマッチングできたら素晴らしいと考えます。とても難しいことだとは思いますけれども。 そうですね、また、これはNTTドコモ様への要望かはわからないですが、例えばカーナビのシステムをうまく組み合わせて「こう走るべき」であるとか、ドライバーにとってのニーズと、この予測需要を組み合わせることにより、ドライバーはもっと走りやすいのではないかと考えています。

 

―そのあたりはNTTドコモ社はいかがでしょうか。

そうですね。NTTドコモとしては人の動きがわかるというところから、ご提供すべき需要データをどのようにもうちょっと進化させるべきなのかというところを東京無線様やデンソーテン様などとお話しさせていただきながら、ブラッシュアップできればと思っています。

 

―なるほどさらに改良を重ねられるということですね。今後、NTTドコモ社としては、どのような未来の展望をお考えでしょうか。

まずこの需要予測は先ほど30分以内にはわかりますという話をさせていただきましたが、さらに高速化をしようという取組みを進めています。要はセンシングをしてから実際に使えるデータにするまでの時間が短ければ短いほど、実態に合った予測が可能になってきます。 また、そもそも「移動の課題を解決する」というところでありますので、移動手段のこの生産性を向上させる、つまり生産性の高い交通を実現することがまず必要であろうということが一つ。

さらにもう一つが、その移動を実現するために必要となるコストをいかに捻出するかというところで、サービスと連携させる必要があるだろうというふうに思っています。要は移動の先には何かしら目的がございます。そこを連携させることが必要となり、つまり二次交通をしっかり作り上げていくということが必要であろうと思います。 その中の一つ要素の、生産性の高い交通というものを実現するときには、この移動の需要というところがキーになってくると思っています。つまりMaaSです。

今、一般的には、Mobility as a Service (MaaS)、つまり、情報通信技術を活用することによって全ての交通手段による移動を1つのサービスとして捉え、シームレスにつなぐ新たな『移動』の概念のことをそう言っていますが、当時MaaSという言葉は世の中にはなかったのですが、我々が構想していることとほぼ同じことが昨今いわれてきておりまして、この技術を二次交通を充実させるという意味でうまく使っていければと考えています。

MaaSというとどうしても複数の交通モードを統合させるというイメージがあると思うのですが、我々ステップ論でもちろん必要になってくると思うのですが、まず生産性の高い交通をちゃんとつくる。それを維持するためのサービス連携、つまり、サービスと連携すればお客さまを連れてきてくれるとか、、そこからの協賛金的なものを得るとか、そういうことができることによって維持がしやすくなるのはと。そのうえで、確固たる二次交通ができれば鉄道との連携というのはおのずとできてくる。いろいろなところの点と点を結ぶ一次交通である鉄道などと連携でき、統合されるというところがあると思うので、我々は昨今いわれている交通課題の解決手段であるMaaSにおいて、この需要予測技術というのは、今回、東京無線様と一緒につくり上げてきたところでありますが、生かされていくであろうというと考えているところです。

 

― その先の未来を見据えて、というところですね。そうなりますと、ますます事業者が今抱えている課題解決も含めて、まずはドライバー自体が「変化を求められている時」とも言えそうですが高林さんいがでしょうか。

―(東京無線・高林)そうですね。IT業界からもいわれていますけれど、タクシーというのは例えば無線配車でどこかに行って、お送りしたら、帰りは要するに何も乗せないで帰ってくる。しかし、ある意味で無駄なってしまう。ですから、そういう意味では、IT技術をしっかりと取り入れながら、IoTの技術も使ってもっとブレイクスルーしたいなと思っています。

 

―NTTドコモ社だけではなくて、ソフトバンク社、au社も同じようなデータを持っている。そこの母数が大きくなれば当然精度も上がるはずです。これは理想的な話かもしれませんが、そういった携帯キャリア全体のデータを使ってのサービス提供というのは難しいのでしょうか。

我々NTTドコモでいえば、約7,800万回線にご利用いただいているドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを利用して作成される人口統計データを提供するモバイル空間統計というサービスを8年前から実用化し提供し、様々なところでご活用いただいているという実績を積み重ねています。約7,800万回線の運用データを1億2,000万に拡大推計する技術を持っておりますので、ドコモの携帯電話をお持ちの方も、お持ちでない方も含めた形で推計をするということが実現できています。

また、他キャリアさんはドコモとは別の通信装置を使われていますので、なかなか統合ということでは難しいのではなかろうかとかいうか、いろいろハードルはあるのだろうとは思います。論理的にいえば、もちろんおっしゃられるとおり、全てのものが集まったほうがいいというところではあるかと思うのですが、なかなか難しい面もあるかもしれませんね。それに使うデータの種類を増やすとそれだけコストも増えますので、我々が長年培ってきたノウハウ・テクノロジーを結集したドコモのモバイル空間統計のリアルタイム版を活用したAIタクシーをご利用いただければと思います。

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―わかりました。さてNTTドコモ社としては、東京無線との連携の次にはどのような展開があるのでしょうか?

2018年の2月に全国でサービス提供が始まり、ファーストユーザーとして東京無線様と名古屋のつばめタクシー様にお使いいただいたのがスタートです。以降、大阪や熊本をはじめ各地で拡大していっております。

 

―たとえば、過疎化が進んでいる地域、そういったところで需要があり、何かアクションできるような別の側面のお考えはいかがでしょうか?

そうですね。数が少ないようなところであれば、こういうやり方ではなくて、たとえばオンデマンド交通のように、実際に予約などで顕在化した需要を見て、そこにうまく供給をマッチングさせるようなやり方が生産性を高めるやり方があるのではないかと考えています。我々は「AI運行バス®」というオンデマンド交通システムを提供するサービスを開始しており、横浜のような都心部でも実績もありますが、鹿児島県肝付町をはじめ地方でも導入が進んでいます。AI運行バスは様々な地域で生産性を高めることができると思っています。

 

―例えば災害時にどう対応をするなどは先のお話でしょうか?

我々の携帯電話ネットワークは、災害発生で停電が発生した直後も一定時間バッテリーで動くようにしたり、中継する伝送回線を二重構築するなど、災害に強い通信インフラの実現をめざしています。設備自体が完全に倒壊したり、中継する伝送回線が完全に切れてしまうと話が変わりますが、災害発生後も通信設備は極力動かすようになっています。動いている間は人の動きがわかる統計データを作り続けます。したがって、たとえば災害により電車が止まったことによる駅での人の滞留状況を把握することは可能で、それに基づくタクシー需要予測も実現できると考えています。そうすれば、AIタクシーを搭載したタクシー車両が、円滑かつ安全に滞留している人を輸送することも可能となり、災害対応にもご活用いただけるのではないかと考えています。AIタクシーが、平時はもちろんのことなのですが、災害時にも威力を発揮するのではないかと考えています。

 

―長い時間お答えをいただきありがとうございました。AIタクシー、つまり、このような予測データシステムによって、まずはドライバーの稼働率が上がり、そしてまた、利用者側の私たちが、タクシーに乗りたい時に乗れる環境構築され、ニーズがマッチしなかったことが、今まさに技術の力によってマッチングされ、より良い方向に行っていることわかりました。本日は素晴らしいお話をありがとうございました。

 

■取材協力:

株式会社NTTドコモ IoTビジネス部 コネクテッドカ―ビジネス推進室
先進ビジネス推進担当課長 槇島章人氏

株式会社NTTドコモ IoTビジネス部 コネクテッドカ―ビジネス推進室
先進ビジネス推進担当 鈴木和成氏

東京無線協同組合 副理事長 高林良吉氏

※本文中、敬称略

 

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